18世紀に入って額縁にも署名が見られるようになってきたと言われますが、それまでは1356年の最古と言われる祭壇画枠に記載された作者名を除き皆無だったようです。
しかもこの作品は額縁というより彫刻美術品としての扱いでその製作状況も特殊な部類に属するものであったため、例外と言っていいのかもしれません。本来の額縁製作者として名声を得たと言えば、やはり挙げなくてはいけないのが高級指物師でもあったエティエンヌ・ルイ・アンフロワではないでしょうか。
その出来栄えは、まさに芸術の域に達したとまで言われるほどの名人芸を遺憾なく発揮したもので、ここにその署名が許されたのも当然といえるかもしれません。
というのもそれまでのこのような工芸品は、請け負ったところの代表者の名を記載するのが普通だったからです。